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法科大学院14校に改善要請 [司法問題]

法科大学院の設置は、司法改革の一環としてなされた制度改変である。法学部を持つ大学は言うに及ばず、新たに設立された大学院も含めて、現在74校ある。
これらの機関のうち、14校について、強い改善を求めている。
改善重点校は、静岡、香川、鹿児島の国立三校、東北学院、大東文化、東海、東洋、日本、愛知学院、京都産業、大阪学院、神戸学院、姫路獨協、久留米の私立11校である。
以下の12校には、継続的に改善の努力を要するとした「継続校」という烙印を中央教育審議会は押した。
信州、島根、琉球の国立三校、白鴎、獨協、駿河台、國學院、神奈川、関東学院、桐蔭横浜、龍谷、近畿の私立9校、合計12校である。
重点校と継続校を合わせると26校、全体の三分の一弱の大学院が問題有りという評価である。

asahi comによれば、<重点校と評価された大学院について、文科省幹部は「社会から求められる法科大学院の役割を果たしていないところが少なからずある。そういうところには決断していただくのも仕方ない」として、統合などを促す指導を強める考えを示した。

 法科大学院は、乱立による過剰な定員が質の低下を招いたと指摘されている。修了者の司法試験合格率は初年の2006年の48.3%から年々下がり、昨年は27.6%にとどまった。特別委は昨春、入試倍率が低く、司法試験の結果が低迷する大学院に定員削減や「抜本的見直し」を求める提言をまとめ>たとある。

このなかで、国立の法科大学院が6校もあることは、当該大学の責任もさることながら、文科省の責任は無視できない。国税の乱費である。旧文部省は、国立大学の大学院については、地方の大学にはなかなか大学院の設置を認めなかったし、認めても修士課程どまりであって、博士課程の設置は容易に認可しなかった。一つの見識のある整合性をもった制度運営であった。ところが、それに対して、絶対的平等を求める地方の大学は不満を抱いていたものである。設置は各法人の自己責任でせよ、として、緩やかに、敢えて言えば、安易に認可をしておいて、補助金の傾斜配分で改善を迫るというのも計画の杜撰さを証明しているようなものである。量の変化が質の変化をもたらすことは自明なことであるから、走行する車の台数を過大に予測設定して高速道路をむやみに造ったり、ダムを造ったり、あるいは飛行場を作ったりするのよりはたちが悪いとも言える。旧制度で殆ど司法試験の合格者を出していない大学が公正と平等の原理だけに頼って設置したのであるから、今回のような結果になることは想定内のことであったろう。そうした予測もせずに新事業を興すのは暴虎馮河の行為だといってもよいだろう。
私立大学の場合は、幻想もあったろうが、より現実的には他の専門分野の大学院研究科の設置と同じく体裁というか沽券に関わることとして設置している場合が多い。法曹界に一定の人材を送り出している日本大学がリストアップしてされているのは、教育体制に問題があるのではないかと推察している。当該の学部長選挙は熾烈を極めるということも仄聞しているが、それは教員の意識が教育に向いていない有力な証左であろう。この制度発足以来、顕著な実績を残している地方の私立大学もあるが、そこでの教育はきめ細かく教員の熱意がほとばしっていると聞く。
昨年開学以来初?の司法試験合格者を出した愛知学院は一年遅れの発足であった。人材確保に後れを取ったためとか聞く。
重点校の指摘を受けた大学は、イエローカードではなく、婉曲なレッドカードの提示だと受け止めるべきであろう。
法科大学院発足当初、専門分野によっては、激しい教員の確保競争が繰り広げられたものである。某大学の法学部に就任した若手が一年か二年で他大学に移籍したり、腰の据わらない教員が右往左往していた、と仄聞したものである。
認可申請に当たっては、採用予定教員には、不認可の場合には、雇用契約は発生しないという一文を誓約として提示しているのが通常であるようだが、今回の勧告で仮に募集停止という決定をした場合の教員の身分はどうなるのであろうか。法学部に所属して兼任している場合は問題ないが、法科大学院専属の教員は、それだけの有為な能力を有しているのだから、雇用の保障を継続しないでもいいことなのであろうか。そもそも新規事業を企画し発足させる場合には、敗戦終戦処理を念頭に描いておくのがまっとうな感覚だと思うが、どうも失敗はしないという楽観論者が多すぎると後遺症は更に深くなるようである。
100メートル競走をヨーイドンで一斉にスタートさせて30メートルにも達しない所でコースを狭めたりして、落伍者に対して競技終了を宣告しているようなもので、文科省の深謀遠慮だったのであろうか。
踊らせた方も踊った方も祭りの後の疲労感だけが残っているのではなかろうか。
敵を知り己を知って、撤収するなら早いに越したことはない。
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