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公共事業擁護論 [国家財政]

「すぐできる経済再生は公共事業。公共事業悪玉説がはびこっているが、何が悪いのか。世間で無駄だ、ばらまきだと言われているものが、岐阜市民、岐阜県民の幸せのために、価値ある社会をつくるために、やらなきゃならないこと。いたずらに言葉に振り回される政治じゃなく、敵がいてもしっかりやり抜く政治をつくることで、強固なふるさとをつくる。それが子どもや孫たちに残せる正しい大人としての生き様だと思う。」(朝日新聞デジタル)
上記は、自民党野田総務会長の発言である。安部首相も公共事業による雇用創出を力説している。
このような考え方で國の財政を運営してきた自民党政権のツケが今日の経済的停滞を招き、デフレ経済に落ち込んだ最大の要因であった。それが次の世代に負担を残すことになっているにも拘わらず、「子どもや孫たちに残せる正しい大人としての生き様」という。何という自己撞着であろうか。
安全と安心を損なうような原発を数多く建設してきたが、、エネルギー政策の実施と言えば、聞こえが良いが、広い意味で言えば、公共事業による財政のばらまきである。それが安心安全どころか、不安と不信の温床になっていることは歴然たる事実であるにも拘わらず、目をそらして付け焼き刃的政策対応で刹那的再生を試みようとしてきた事実などなきが如くに旧態依然とした政治的プロパガンダを展開している、と言っても過言ではなかろう。
明日の希望より今日のパンを求める発想は、物価上昇率2%という基本的な政策理念とも相容れないのではなかろうか。

生活保護費引き下げ [国家財政]

生活保護受給者の方が、低額の年金受給者や一部の労働者の賃金より恵まれている場合があったり、貧困ビジネスの温床として「悪用」されている事例があったりして、世論を味方につけつつ生活保護費の切り下げがほぼ間違いなく実施されようとしている。この生活保護費の切り下げのもたらす問題点も指摘されている。
一方、生活保護の切り下げに先んじて10月から年金も減らされることが決まっている。年金切り下げは物価上昇率に見合って改定されることになっているのだが、据え置かれて引き下げられなかった分が引き下げられる。これに対して、年金受給者から、生活保護費の切り下げが先だという意見も述べられたりしている。
生活保護費を目の敵にする風潮がなぜか一般的になっている。その背景には疑問を抱かせる受給者もいて、受給者が200万世帯を越えて社会保障費が財政を圧迫しているからだという。確かにその通りであろうが、企業に対する減税をする一方で、国民は等しく文化的で健康な生活を営む理念に即して設けられている生活保護費を減額するのは、国民生活の全ての面で生活水準を低下させることになるだろう。最低賃金も切り下げられるだろう。
問題なのは、年金受給者が年金の減額の前に生活保護費の削減が先だというような貧しいものが貧しいものの足を引っ張る問題意識でないかと思う。為政者の思う壺であろう。自民党政権は一部の金持ちと企業に有利になるような財政運営をするのを党是としている。貧しいものをより貧しくするような口実を為政者に与えてはならない。そもそも生活保護受給者の増大は、生活保護を受給している側に責任は殆どないと言ってもよい。
また、生活保護費の削減は、物価上昇率を2%に設定して、脱デフレを目指す安部政権の財政政策とも相反するだろう。貧しいものの方がものを買いたいのである。圧倒的多数の庶民の購買意欲を萎縮させるような政策運営をするのだから、どこまで本気でインフレターゲットを実現しようとしているのか疑わしいこと甚だしい。

需給ギャップ15兆円とトヨタ商法 [国家財政]

経済は結局は供給と需要の問題に尽きるとも言われる。
今日の我が国のマイナス成長は需要がないからであって、それがデフレを招いている。そこで安倍自民党総裁は、政権を担うと、マイナス金利と無制限の緩和を目指すという。根本の需給ギャップを放置しておいて、そのような財政政策をとっても、需給ギャップを平衡化することはできないだろう。むしろ小渕内閣の時の二の舞になる危惧を覚える。金融政策で経済を動かせるのは、成長路線に乗っている時だけのように思う。
某私立大学がキャンパスを都心に移転させた。そこで30年前に移転していた郊外のキャンパスを売却したことが報ぜられていた。キャンパスの跡地を買ったのは、トヨタ自動車の住宅部門のトヨタホームである。新聞記事では売買の金額は書かれていないが、聞くところでは、売買契約は20億円で、校舎などの施設の撤去費用は大学が負担するという条件らしい。だから、その大学は、10億円も手にしないという。
この大学がこの校地に投資した金額は、160億円から200億円に及ぶとも聞く。当該の学校法人の懐具合や買い手のつかない状況をみて、トヨタは買い叩いたのであろう。宗教法人も土地買収に名乗りをあげたそうだが、大学のある自治体が首肯しなかったとか。それはそうだと推察できる。なぜなら宗教法人が買ってしまうと固定資産税が市には入ってこないと計算したのだと考えるのが筋だろう。住宅会社なら、年月をかけながらでも、住民も移住して、固定資産税収入をえることもできよう。
トヨタホームは、350戸から400戸の家を建てる計画だという。土地付き住宅で一戸について、3000万から3500万円の家を建築したと仮定すると、ただ同然の土地から大きな利益を生むことになるのである。さすがトヨタ商法ということになる。
一方、学校法人は、160億円を越える投資を実質5億円程度にまで資産を減らしたのであるから、実に無残な経営をしたことになる。
両者に生じた需給ギャップの差が貧富の実態となって表れるのが経済活動なのであろうか。

円暴落とハイパーインフレの危惧 [国家財政]

先日テレビで藤巻ジャパンの藤巻氏が1000兆円の国債発行に関わって、円高が日本経済沈滞の最大の要因であって、1ドル300円350円になって始めて沈滞から脱却でき成長過程に入れる。今日の韓国経済隆盛は、IMF主導下で経済立て直しを図り、ウォン安が輸出を拡大させて韓国経済の発展に結びついた、という趣旨のことを語っていた。氏自身が言っていたのかどうかは定かでないが、将来の円暴落に備えて資産の90%をドルを中心にした外貨で運用しているという。
巨額な国債発行、つまり日本の国家財政が破綻状態にあることは、周知のことである。
韓国がIMF管理下で国家財政を再建した時と大きく異なるのは我が国は債権国であるということではなかろうか。1兆ドルの米国債券を保有しているのであるから、これを売却できるかどうかは別にしても、仮にも藤巻氏のいうように1ドル360円に円が暴落すれば、我が国のドル建て資産を円に換算すると360兆円になる。ドル建て以外の外貨建て債券も円安効果に伴う資産価値の増大を伴う。現在の国家予算の三年超の価値に相当する。更に、外貨建ての個人資産も多いであろうから、円の暴落は国家財政再建に寄与するであろう。勿論、インフレで国家予算も現在の三倍以上にはなっているだろうから、単純な数値を上げることはできないだろうが。
ギリシャやスペイン、ポルトガルなど南欧諸国の財政破綻が世界経済の問題になっているが、これらの国は債務国である。このように推理すると、現在の為替相場で円が高いのはそれ相応の理由があるのではないかとなけなしの知恵で推理している。
将来円が暴落して、ハイパーインフレの時代が到来した時、外貨資産をどのようにして国益に結びつけて経済再生に結びつけることができるのか、専門家の展望を知りたいものである。森嶋道夫氏ではないが、チャートを描くだけの為政者を求めることが期待できないのであるから、経済の専家の見解を聞きたいものである。また国家財政破綻によるハイパーインフレ克服に力を貸すIMFなどは債権国の財政破綻国家再生のシナリオをどのように描くのか知りたいものである。
そう考えると、1ドル300円や360円という円の暴落はあり得ないとも推論できるようにも思える。ド素人の推論である。

消費税増税は円高要因では? [国家財政]

我が国は巨額の財政赤字に苦しみ、国債の発行残高も一千兆円に垂んとしている。時には歳入の半分以上を国債に依存している。にもかかわらず、ユーロに対しては94円まで円高になり、長期国債の金利も0.720%という超低金利である。国債を発行している財政当局にすれば、有り難い資金調達の環境に身を置いていることになる。
巨額の財政赤字を積み上げていても市場では円は安定的な通貨として認識されている。企業は円高で収益環境が厳しくなっているという。それでも経済連などは消費税増税を主張して已まない。消費税増税は社会保障制度の一体改革の一環として実施するのであって、後世に負担を残さない為に必要だというのが野田首相や自公の言い分である。聞こえはよい。
消費税増税により国庫が豊かになり、財政赤字が減じていくということは、それだけ円の価値を高くするということであろう。論理的に考えるとそうなる。
円高で苦しんでいる輸出企業が消費税増税を支持する意図が分からない。ここに落とし穴があるのではないか。輸出企業には消費税を海外の消費者に負担させることはできないとして消費税の還付がなされていて、豊田市などはトヨタ自動車に500億円もの還付が為されることがあると聞く。即座に還付しないと延滞利息を払わなければならないのである。下請けの会社には消費税増税分を吸収させておいて、大手の輸出企業は消費税の還付を受けるというこのからくりを聞き知って、消費税を安易に増税しようとしてきた野田政権の本質を明確に知ることができる。
自公がそれに同調するのも分かろうというものだ。庶民階層の支えられている創価学会を支持基盤にする公明党が増税に賛同するのは、増税分の分配を自党に有利になる政策に反映させたいためであろう。創価学会会員の信仰に支えられた善意を巧妙に援用していることは秘中の秘であって透明性は必ずしも保たれていないと考えるのが妥当な推測であろうと思う。
財政赤字を積み上げ、警告や批判を無視して危険な原発を作り続けてきたのは、自民党やその片棒を担いできた公明党の実績なのである。その後始末を違う形でするべき民主党は政治的手法の稚拙さなどと相まって野田政権では完全に従来の自民党政治を踏襲しているだけであって、社会党の村山首相が自民党に踊らされたのと同じ軌跡を歩んでいると言えよう。そして最近の世論調査では自民党支持が19%でトップ、民主党は10%を切っている。
円高を食い止めようとして、円売り介入の正当性を財政当局や財務大臣が言いつのる一方で、消費税増税という政策を最優先しているのは正に矛盾そのものであろう。もっと根本的な国の財政問題を考える必要があるのではないかと推理できるが、悲しいかなその知恵もない。地道に国を運営して来なかった咎めなのだろう。正に自業自得なのであろうか。

宗教法人への非課税制度 [国家財政]

イタリアでも国家財政再建のための増税策の一環としてカトリック系教会への課税を強化するという案が浮上しているというニュースが報ぜられていた。その後の進展は不案内であるが。
昨日のモーニングサテライトで、金環食を見るためということも一つの契機になってプラネタリウムが盛行しているという。あるお寺では、設備投資として2000万円を投じてお寺にプラネタリウムを設置している。僧侶が講話をした後、プラネタリウムを設置している部屋に案内して見学するお参りの人に説明していた。僧侶曰く、これからの少子高齢社会でお参りをして貰うためにプラネタリウムを設置したのだという。参拝者や信者はお布施を寄進しているはずである。プラネタリウムという物質的設備投資で寄進をうけるとなると、これは一種の企業の営利活動と同じである。お布施という任意の寄進は一律ではないので、観覧料に該当しないだけで、実質は同じである。宗教施設内での活動であるから、非営利扱いになって課税対象にならないというのは不合理であると言える。もっと謂えば、一種の脱税行為であるといってもよい。お寺が運営している駐車場はさすがに課税対象になっているとも聞くが、当然であろう。
学校法人でも似たようなことがある。近所の幼稚園を経営する理事者は近隣で売りに出された居宅を借りているのか購入しているのかは知らないが、園児の父兄や職員の駐車場にして使っている。幼稚園に付属する設備として固定資産税は収めていないだろう。
地方自治体によっては、財政の逼迫を理由にして、学校法人の施設でも純粋に教育のために使う目的でない学生食堂の敷地などには固定資産税を課しているところもある。自治体の裁量に委ねられているのは、固定資産税の徴税権が地方にあるからであろう。
デリバティブや為替取引をしている学校法人が多くの損失を計上しているが、考えてみれば、国の補助金を交付されているのに、そうした怪しげな金融取引や活動に手を染めている学校法人を非課税法人とするのも不可解なことで、非合理的なことであろう。
宗教法人への課税を打ち出せば、創価学会を母体にする公明党は他の宗教法人と組んで猛反対をすることは必至である。オウム真理教を宗教法人として認めたのが、サリン事件などを惹起させた遠因であるとも言われているのだから、政治改革、労働市場改悪、税制の抜本的改革など改革改変の時代だというのであれば、全ての制度にわたって妥協のない再検討がなされるべきであろう。

円売りドル買い介入 [国家財政]

<安住淳財務相は31日午前、ドル買い/円売りの市場介入を実施したことを明らかにした。介入は単独介入。午前10時25分から行ったという。安住財務相は「実体経済を反映しない一方的・投機的な動きが続いている」としたうえで、「納得いくまで介入する」と語った。>(東京31日ロイター)
75円台の戦後最高値をつけていたドルが79円台まで円が下落している。相当強いドル買い介入を実施したのだろう。恐らく、様子見で下落しただけだろうと推測する。当面は、75円から80円前後でドル円は推移するのだろうが、諸家の見解を聞いていると、結局は円高の方向に向かうのが趨勢のようである。
投資先として円が買われているのではなく、欧州の金融危機を背景に避難通貨として円が買われているとか、あるいは、ドルの実態が過大に評価されていた、裏返せば円が過小評価されていたことの修正がドル安円買い、円高の進行だと言われたりしている。円とドルとの関係は、諸々の経済的数値すなわち米国の財政収支や貿易収支の額などに照らすと、50円台が適正で、その水準まで円高になるという見解もある。
円高で企業が悲鳴を上げているというのは、共通の認識である。
財務大臣は、「実体経済を反映しない一方的・投機的動きが続いている」「納得いくまで介入する」と説明しているが、むしろ世界の実体経済を反映して円高が進んでいると理解するのが合理的ではなかろうか。ドルの実態が過大に評価されていた、つまりドルの垂れ流しが日本が世界最大の債権国になっていたというふうに理解すべきかもしれないのである。実力以下に評価されていた円と実力以上に評価されていたドルの関係があったから貿易収支における巨額な黒字をため込むことができた。それが今正当に評価されてドル高の修正となり、円高になっていると理解すべきかもしれない。有り難く儲けた時には、恩恵を最大限に得て、困った事態が来ると悲鳴を上げているに過ぎないというように理解できるかもしれない。
そのように考えると、財務大臣が言うように、納得するまで介入するとなると、どのような納得の仕方になるのか分からないが、結果としては、ドルを貯め込むということになり、世界最大の債権国になるというのは見やすい道理ではなかろうか。そして、円を売るということは、円資産を減少させることになり、国富を減らすことになるだろう。ドルという弱い通貨を貯め込むことは、今後のドル安、ドルの水準訂正の中で、所有しているドル資産はますます価値を減じることになろう。
円高を言いつのって、1ドル90円台で円売りドル買いの介入して得たドル資産は今や価値を減じている。1ドル75円台で円を売って買ったドルは、1ドルが50円台に下落すれば、巨額のドル資産の価値減少を招くだけであろう。その意味では円売りドル買いの市場介入は国富を毀損させているだけにならないであろうか。
このように考えると、ドル安ユーロ安ポンド安を奇貨として、むしろ金を買う方が国富を豊にするのではないかと考える。ド素人の愚かな考えであろうか。
将来、ドルの水準訂正が図られて、円安の流れに移った時に仕掛けられる投機資金による円売りの事態が来る方がむしろ国益の損失が大きくなるだろう。企業の海外移転による、産業の空洞化の事態よりももっと深刻な経済状況を招くのではないかと推理する。
円売り介入よりも、円高をもっと有効に利用することを考えるのが政府・日銀やエコノミストのやるべきことではなかろうか。
目先の利益にとらわれて大きな利益を得る機会を失わないことではなかろうか。事実と論理をもっと重視すべきのように思う。

物価下落を根拠にした年金の減額の問題点 [国家財政]

<厚生労働省は公的年金の支給額を段階的に引き下げる方向で検討に入る。現在の年金は過去の物価下落時に支給額を下げなかったため、本来より多くもらっている。厚労省はこの特例で加算された部分を3年かけて解消し、本来水準に戻すことを目指す。早ければ来年度からの実施となるが、年金減額には与野党に慎重な意見が根強く、調整の難航も予想される。
 現状では2.5%多くもらっており、その分を3年かけて段階的に解消する>(日経新聞)
物価の下落時に支給額を下げなかった原因に相当することが解消したのであろうか、という疑問を抱く。
物価下落と一概にいうが、年金生活者の日常生活と深い関わりのある石油や食料品、例えばパンの値段などは上昇している。交通費や医療費が下がったという話は聞かない。むしろ、非接触カードの導入を契機に従来の割引率の高い回数券やカードの発行を止めたりして、実質的な料金値上げをしている。新聞代や放送料金も下がっていない。最近では電力やガス料金はむしろ値上げされている。
介護保険料や健康保険料は少なくとも上がっている。介護保険の会計は黒字化するように仕組まれている。
現役労働者の賃金が下がっているのは、労働条件を引き下げる因になった派遣労働の導入などに起因している。企業は人件費を抑える一方で巨額の現金を貯め込んでいる。
シニア世代の中には、確かに豊かな生活を享受している年金生活者もいるが、定年退職者の必要な生活費は月に23万円前後だと計算されている。平均生活費として試算される数字の根拠と物価下落の根拠とされる数字の関連性がどのようになっているのかを明確に示すべきであろう。
数字のからくりと統計の魔術は人を欺く場合が多い。つまり実態と乖離していることが多いのが常である。
年金財政の視点だけで年金額の問題を論ずるのは筋違いであろう。国家財政を始めとして、財政を司ってきたのは、官僚であり、政治家である。財政の整合性を無視して財政運用をしてきた反省もせずに生活者に負担を強いようとするのが今回の年金減額の検討のように思われる。
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震災復興の財源論 [国家財政]

<東日本大震災の復旧・復興費4兆153億円を盛り込んだ2011年度第1次補正予算案は、30日の衆院本会議で全会一致で可決、参院へ送付された。

 1日から参院予算委員会で審議され、2日に成立する見通しだ。

 予算案は、がれきなど災害廃棄物の処理や仮設住宅の整備、被災者生活再建支援金の支給、道路や港湾の復旧など緊急に必要な経費が中心。財源は11年度当初予算で基礎年金の国庫負担分として盛り込んだ約2・5兆円を転用するなどして捻出する。>(YOMIURI ONLINE)


国債発行の巨額な残高を抱える中で、非常事態発生とともにその財源が問題にされる。目的を限った国債の発行とか、日銀の国債引き受けとか、いわゆる埋蔵金探しに躍起になるのを常としているのが、ここ数年の予算編成段階での議論である。今回は震災という異常事態の中での補正予算の編成であったが、復旧・復興費用として、当面の措置としてであろうが、平成23年度の当初予算に組み込んだ基礎年金の国庫負担分を転用するというのが今回の補正予算措置の経緯であった。
予算委員会の審議過程について、読んだり聞いたりしていないので、細部にわたる議論の過程は知らない。しかし、メディアを通じて把握する限りでは、外国債の売却による財源確保の話は聞かない。
世界第2位の債権大国である我が国がこのような非常事態時の財源に外国債を売却して財源を確保するということが議論にもならないのは不可思議千万であろう。我が国は、中国に次いで巨額な米国債券を購入所有していることは周知のことである。現在の為替レートで円換算しても、82兆円強にはなっているだろう。米国債から得られる金利所得は、低金利と言っても相当な額にのぼる。それらは国庫収入として予算として計上されているのだろうが、米国債を含め保有する外国債の3%相当でも市場で売却すれば、基礎年金の国庫負担分を転用せずともよかったはずである。
個人なら家計に非常事態が生ずれば、元金を割るようなことがあっても、株式や債券を売って凌ごうとするのが通常の行為である。
既に書いたことであるが、米国債の売却には米国に承認を求める必要があるようである。米国債の売却は国債の下落、金利の上昇を招くという問題点があることは推理できる。しかし、日本円で3兆円程度の米国債の売却ならば、市場に大きな影響を及ぼすとは思われない、と考えるのはド素人の言い分であろうか。現に報道では、先の円高局面で諸外国が強調して円売りをした規模は3兆円程度ではなかった、と記憶する。

聞きかじった限りでの知識で論じているので、ド素人の犯す陥穽があるのだろうが、国際金融の仕組みの本質を知りつくしている、米国の金融関係者などの利害と深く関わった問題が内包されているのだろう。

反米の立場に立つことの多い共産党などはこの種の問題を国会の審議で議論して問題の本質を白日の下に晒して欲しい。

追記
<政府は震災前、基礎年金の国庫負担維持に必要な2.5兆円について(1)11年度は独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構の利益剰余金など「埋蔵金」を使う(2)12年度以降は税制の抜本改革による増税分を充てる--方針だった。だが、震災後は(1)を復旧費に回し、(2)の方針を11年度に「1年前倒し」(野田佳彦財務相)することで決着した。

 元々、(2)の「12年度以降分を増税で賄う」方針は、11年度末までに消費税増税を法律で決め、その後--との順番が大前提。準備期間の関係で実際の増税は14年度以降になる見通しだが、その間年金積立金の取り崩しが続いても、将来の増税が法律で担保され、返済の見通しがついている点がミソだった。

 ところが、「11年度分も将来の増税でまかなう」という今回の前倒し方針は、法改正による増税の裏付けがなく、返済の保証もない。厚生労働省は「当初方針と似ているようで実は違う」(幹部)と不信感を隠さない。

 また、14年度から増税に踏み切り、11~13年度の年金積立金取り崩し分(毎年2.5兆円、3年で計7.5兆円)が完済されても、その間、積立金の運用収益は減る。市場での平均運用利回り(01~09年度、名目)は1.77%。この通りなら、11年度だけで約450億円の運用収益を失う計算となる。3年間なら数千億円の損失だ。

 09年度末の年金積立金残高は128兆円。既に計画の154兆円を下回っている。厚労省は給付がピークに達する30年後には220兆円まで積み上げ、巨額の年金を支給する計画だが、これには一定の運用益を織り込んでいる。そもそも同省の運用計画は、平均運用利回り(名目)を4.1%に設定し、「甘い」との批判を浴びている。運用益が想定を大きく下回れば保険料の値上げや給付減に直結する可能性もある。>(毎日新聞)
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