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戦わずして勝つ [国家財政・外交]

昨年9月の沖縄県・尖閣諸島の国有化以降、中国の軍用機が東シナ海上空で日本領空への接近飛行を繰り返していることが8日、分かった。中国機は日本領空の外側に設けられた防空識別圏をたびたび突破、その都度、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)し対処しているが、防衛省は事実関係を発表していない。尖閣周辺での相次ぐ挑発を受け、政府は警告射撃など自衛隊の対抗措置を強化する検討に入った。(産経新聞)

この記事のように、警告射撃などで対抗措置をすれば、中国の思う壺だろう。
中国の戦艦が尖閣諸島周辺に出没したり、軍用機が領空侵犯すれすれの飛行をしているのは、正に孫子の兵法の戦わずして勝つという戦術に従っているのだろうと考える。
鄧小平氏が後代の知恵に期待するとして領土問題を脇に置いて日中正常化を優先したという経緯もあるなかで、歴史的に日本固有の領土だとしても、石原知事のがさつな発言に悪のりして野田首相が一方的に国有化を宣言したことが問題を拗らせることになったのである。
仮に警告射撃をしてそれが中国軍用機に損傷を与えた場合、日本の領土や領空内だったということが国際法上明確に認められない以上、不当な攻撃と認定されれば、国際的批判を浴びることになるのは必定であろう。
短気を起こさず抗議を外交的に繰り返しつつ、粘り強い外交交渉を続けることが戦わずして勝つ戦術に戦わずして勝つ方策であろう。

日本の財政破綻と米国債売却問題 [国家財政・外交]

我が国の財政が殆ど破綻状態にあることは周知のことであろう。来年度の歳入で言えば、半分以上が国債頼みであって、その結果、国債発行額即ち累積債務は1000兆円に近づいているという。にもかかわらず、ギリシャやスペインなどのような円の暴落に結びつかず、むしろドルやユーロの下落を招くなかで、円の独歩高が際だっていたりしている。従って、円が過大評価されているという識者もいる。
米国の格付け機関も日本の国債の格付け見直しで格下げしているのは、日本の国家財政だけを見れば、それ相応の評価であろう。
日本の国債が下落しない、長期金利が1.3%前後に張り付いているのは、国民の金融資産が1500兆円ほどあるからだとも言われて、国内の機関投資家が国債を消化しているからだと言われる。そうした中で、二、三年後に国債が暴落し、株、円安のトリプル安が間違いなく日本を襲って、ハイパーインフレが生起するだろうと予測してその対策を説く書物が書店で平積みされている。浅井隆氏などの論調はその筆頭であろうか。
筆者は経済学に通暁していない素人である。ハイパーインフレの恐ろしさは、戦後親からよく聞かされた。戦前一万円の保障で入っていた生命保険が紙くずになったこととか、半ば強制的に購入させられた戦時国債が、紙くず同然になったとか。だから、この学習効果で国債を買う気には全くならない。
ある意味では国家ほど信用にならないものはないからである。国家というより為政者という方が当たっているだろうが。ドッジラインとか耐乏生活というような言葉を子供心に聞いたことを記憶している。
ハンバーガー一個2000円、牛丼一杯4000円?というようなことが想定されている。09年度には、GDPに対する日本国の借金の比率が二倍になり、財政破綻したジンバブエに匹敵する事態だと言われる。
こんな状態でよくも国債を増発できるものだと思うが、為政者は不思議な思考回路を持つ人種なのか、安全ネットを張らずに綱渡りを平気でやる。
韓国経済が再興したのは、IMFの管理下で経済を立て直したからだという。失業率も低く韓国製品は世界を席巻していると聞かされる。その一方で、優良な企業は欧米の資本に牛耳られているとも言われる。
国家が巨額のというより天文学的数値の国債を発行している一方で、米国債の残高は1兆ドルに迫っている。円に換算すれば、100兆円ほどの資産を保有していることになる。中国に次ぐ米国に対する債権大国であることも厳然たる事実である。100兆円では1000兆円の債務の10分の1である。それでも一年間の国家予算に相当する金額である。言ってみれば埋蔵金であり、国民が額に汗して働いた果実である。
ところが、この米国債を自由に売ることができないという。木村太郎氏がNHKのキャスターをしている時、石油価格暴騰だったかの折りに、米国債売却に触れる発言したことがあったように記憶する。あるいは、政治家の中にも米国債売却を主張していた、いる人もいる。そして、そうした主張もいつの間にか闇の彼方に消えてしまったように思う。それは、米国が頑として容認しないためだという。更に近時では、中国も米国債の下落を恐れて反対するだろうという。
仮に日本が米国債を市場で売却すれば、米国債の暴落を招き、金利上昇の引き金を引き、世界経済が大混乱に陥り、大恐慌を将来するだろうことは、理論上も実際上も明白に予測できることである。しかし、自国の経済再建の為に所有する外国債券を自由に売却できない、売却する場合は発行している米国の承認が必要であるというのは、真に不公正なことであり、自由主義経済の根幹に関わる問題である。のみならず、常々公平や自由主義を声高に唱える米国の議論のご都合主義が見えて来るではないか。日本国一国の年間予算相当の財産が他国の許可を得ないと自由に使えないというのは摩訶不思議である。米国債購入時に、売却に当たっては発行元の許可承認を要するということが条件として付与されているのであろうか。
今米国では、共和党議員を中心にして、オバマ大統領が提案する金融改革に対する規制の強化は、自由の原則に悖るとして反対論が盛んである。この恣意的な彼らの論調や主張にはどこにも彼らが好んで使う公平性や公正さは微塵もない。あるのは自己の利益追求の観点(強欲)だけである。
中国が反対するというのも勝手な言い分である。
今回鳩山首相の基地問題での対応について、アメリカの一部の新聞の論調は軽侮と言ってよいほどの反応を示している。それは自国の利益を最優先している上でのことであって、相互信頼とか相互理解の上での論評でも評価でも何でもない。我が国が沖縄県民の意思を尊重しつつ国益を図ろうとすることは一切無視されている。軍事費を含む安全保障の問題について、日経新聞も自衛問題に関して、核の傘に入っていることでのコスト負担の低廉さを言いつのっている。確かに戦後の日本が憲法の理念をテコにしてアメリカの核の傘の下で割安な安全保障を維持してきたことは間違いない。自衛のための軍事力をもてば、厖大な軍事予算を必要とすることは当然である。しかし、上記に記したように日本は1兆ドルの米国債を所持して、自由に処分できないのであるから、決してタダで安全保障を米国から得ているのではない。国家予算の一年分をまるまる担保として差し出しているのと同然なのである。そうした客観的事実を隠蔽して米国に隷属することが、日本の安全と平和を維持せしめているのだといわんばかりの奴隷根性丸出しの日経や読売、更には産経の論調にはうんざりさせられる。
ニクソン大統領が突如中国訪問を断行して、毛政権と国交樹立の会談をした歴史的外交問題についても、日本には一切事前連絡はなかったことは外交上の、日米同盟上での客観的事実である。
識者の中には、日本はアメリカとの関係が弱まり、中国などとの関係を重視し出すと世界での立場を危うくしてきたという論調をして日米関係を最も重視する立場の人がいて、それに与する人も多い。歴史的には結果としてそうした国運の展開があったと言えるだろう。しかし、それはパクスアメリカ-ナの世紀であったからに過ぎない。今後もそうなるという保証はない。
原理的に言えば、こうした問題が論ぜられるのは、独自の価値観に基づく価値体系、つまり整合的な世界理解を持てない、というより持つことを怠ってきたからなのであろう。さすれば、そうした中でどのような進路を選択するのかが問題にならなければならないだろう。

国家財政破綻に伴って個人がなすべきことの一つとして、浅井氏は「生き残るという強い意志をもつこと」を上げている。その浅井氏が米国債の売却については、米国の承認が得られないと初めから諦観しているのも奇妙きてれつな論であろう。
またIMF管理下に仮に日本が入った場合、IMFは日本が所有する米国債については手を付けさせないで、財政再建を求めてくるのであろうか。もしそうだとすれば、これまたIMFという公平であるべき国際機関の正体が分かろうというものである。

我が民族の徳性は何かというと、己を虚しうする能力を持っていることだと常々考えている。それを武器にして諸外国との関係を切り結ぶしかないだろうと考える。その徳性を生かすためには、粘り強い所業が求められる。その意味では、鳩山首相ののらりくらりと評せられている基地問題での対応の仕方は、簡明な単刀直入を好む人のブーイングの対象になっているが、ある意味では、瞠目して見守っている。

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