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年金の相続税と所得税二重課税の時効問題 [司法問題]

年金形式の生命保険金に対する二重課税が憲法に違背するとの最高裁判決が出て、時効になっていない5年間の課税については、納入した税を国庫から還付返還することが法的に確定した。
この返還もむろん申請に基づくものであろうが、自分の利益になる場合は、押しつけのサービスにこれ勉める生保各社も、今回は殊勝にも還付対象の契約者を洗い出して通知するとのことである。年金を受給している契約者は所得税を差し引く段階で通知すればよいであろうが、既に受給権が終了している既契約者などの洗い出しは厄介なことであろうと推察する。
そうした生保各社の手間暇の問題はさておき、野田佳彦財務相は、法律で認められない5年超も含め所得税を還付すると表明した、と報ぜられている。時効を回復するためには新たな法改正もするという。
財務大臣の問題把握は著しく庶民感覚とかけ離れている。
そもそも相続税を納めるだけの相続者はそんなに多くはない。相続税については、色んな特例や優遇もある。今回の女性の事案は、10年間にわたり毎年230万円の年金受給権を得ているという。これだけの年金を受け取るために亡夫が毎月か毎年掛けていた掛金は相当な金額であったはずだ。それだけの掛金を払う資力は当然他の資産を所有していたことをも想定させる。相続税の課税対象になるだけの資産があったことになる。
そうしたことも含めて考えると、5年以上も前に遡及すると軽々しく発言する野田大臣のそれこそ俗受けを狙った正義感面が何とも貧弱に見えてくる。法的安定という問題についてのみならず、法の体系性という観点からみても、時効問題を検討するには無理のある問題である。のみならず持てる者・金持ち優遇の誹りを免れないだろう。二重課税を背負ったために生活に窮したという人がいたかどうか。
国民年金の掛金さえ支払うに難儀している人に比べれば、高額な個人年金受給の掛金を支払う人は恵まれた人である。だから、税の矛盾を問題にして訴訟に持ち込むことができたと言ってもよい。
恐らく、この問題を実務的に処理する過程では、時効に及ばない事例も含めていろいろな問題が出てきて、5年超の問題について行き詰まって最後は現行法規の遵守ということで決着する、野田大臣がそれを謝罪するということになるのではないか、と推測している。もしこの予測が外れるならば、法改正の過程を吟味検証して問題点を改めて提起したいと思う。

そもそも国庫を預かる財務大臣が、歳出に厳しく対応すべき時に、恵まれた一部の者のために、法改正をしてまで、財布の紐を緩めるが如き発想に立つのが疑問である。反面、消費税増税と財政再建を言いつのっているのであるから、金庫番に相応しくないと言っても過言ではなかろう。

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