SSブログ

田中文科相の大学設置不認可 [教育]

大学設置・学校法人審議会で設置が容認された三大学、秋田公立美術大学、札幌医療保健大学、岡崎女子大の設置認可を「大学の数が多すぎ、教育の質の低下」を理由にして、大臣の権限で認可しなかったことが物議を醸している。政治の教育に対する介入、暴挙だという発言まで飛び出したり、愛知県の大村知事は権限の乱用を越えた行為だと相当興奮して批判をしていた。
新聞などでも、不認可の理由を説明すべきだという論調もある。
既に設立されている私立大学の半分以下で定員割れしているのが現状である。ここ十年来で設置認可された大学が定員を確保しているかどうかの検証がなされるべきであろう。設立認可を申請する場合には、学生確保の目処や成就を示すことになっているという。卒業後の進路の確保も謳われることになっているとか。卒業生がどのような分野で活躍するか、その受け皿があるかいなか、ということも求められていると聞く。
設置審議会が設立後の点検を設置趣意書に従ってやっているかどうか。法科大学院の場合でも計画通りに学生が確保できずに改善が求められている法務研究科も多い。
札幌医療保健大学の場合は知らないが、秋田公立美術大学にせよ、岡崎女子大にせよ、短大の四大化を目指しているのであって、短大としての使命を終えた教育機関を四年制大学に移行して、命脈を保とうとしているだけで、受験生確保は覚束ないであろうと推察される。初年度は入学定員を確保できても、完成年度の四年間で定員割れして四苦八苦している大学はいくらもある。でなければ、私立大学の半数が定員割れという事態をまねいたりしないだろう。
政治の教育への介入というのも奇妙な言い分である。知事が大学の設置不認可を問題にする方が余程教育への介入のように思われる。愛知県にせよ、秋田市にせよ、大学を設置していて、その設置責任者は知事であり市長である。最終的な設置の認可権は文科相が掌握しているが、大学が学生定員を満たしていない時には、当初予算を組んでいるのだから、定員を充足するまで追加合格をせよ、と命ずると聞いたこともある。
また、認可申請に当たっては政治力を利用してお願いという圧力をかけることもないわけではないだろう。大村知事の発言はそうした政治的介入であり、圧力であるとも言える。
田中文科相が不認可にした理由を明示する前に、大学審議会に提出された各大学の設立趣意書を公開した方が今後の教育行政を進めていく上で有意義かもしれないと思う。
秋田公立美術大学は公立大学だから安心だという固定観念を打破する意図が田中大臣にもあったのかもしれないが、大阪では市立大学と府立大学の統合が検討されたり、地方の公立大学は地方財政の悪化を受けて運営に苦慮しているのが実態である。
今回の不認可騒ぎは、既定路線、前例を無視し打破した田中大臣の手続きの異常さに問題が集中しているようだが、だからこそ本質を大臣は突いているとも言える。

追記:不認可の女子大理事長(岡崎女子短期大学学長)は「地元で4年制大学の開学を待っている学生はいる。新たに教員12人の採用も内定していた。学園にとっても受験生にとっても損害は計り知れない」といい、「(設置予定の子ども教育学部のような)保育士を養成する大学は、地域で必要とされている」と言う。
この発言もある意味では不見識であろう。「受験生にとっても損害は計り知れない」というのは、受験すれば、全員合格することが前提になっていて、選抜するだけの志願者がいないかもしれない、という不安を言わずながらに語っているのではなかろうか。短大として、47年間に「18,614人の教員と保育士を送り出してきた実績」を誇っているのであるから、四年制大学に移行することもなかったかもしれない。多くの伝統のある女子大が男女共学へと制度改変している時に、女子大を敢えて設置する趣意も測りかねる。男子を排除するのは、受験生確保の点でもマイナスになるのではなかろうか、といらざる心配をしたくなる。
追記2:結局は三大学とも認可した。認可の通知は文部官僚がしていたが、大臣自身が足を運ぶべきだったろう。また、これらの大学の志願状況を完成年度まで追跡するのがジャーナリストではないかと思う。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。