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学位の取り消し [教育]

「東京大学は9日、学位論文などで他の研究者の論文を盗用していたとして社会科学研究所の安藤理(さとる)助教(33)の博士学位を取り消すと発表した。
 同大で博士学位が剥奪されるのは、昨年3月に論文盗用が発覚したトルコ人助教に続き2人目。安藤助教は「基礎的なマナーが欠如していた」などとして盗用を認めており、同大は今後、処分も検討する。」(読売新聞)
 この種の事例を見聞きするたびに不思議に思うことがある。
学位審査のためには、この場合、東大の社会科学研究所の教授が中心になって学位審査委員会などの組織が作られているはずである。審査の予備段階の委員会を作っている所もあると聞く。
学位申請がなされたら、無条件に審査委員会を作ったとしても、論文の審査がなされて、学位授与に値するとの審査報告が教授会に報告され、最終的にそこで承認され、更に大学の評議会相当の機関に報告され、そこで最終的に承認され、文科省に報告され、官報に記載されるのがおおよその道筋であるはずだ。細部では多少の違いはあるだろうが、どこの研究機関もそうした手順を踏んで審査が行われているはずである。
学位審査委員会は、その分野の専門家が中心になり、周辺領域の研究者も加わって構成されているはずである。通常は構成員は奇数の人員で構成されるはずで、それは学部の卒業論文審査でも同じであろう。
学部の卒業論文審査でも、盗用が見つかると、論文は不合格になる。論文指導に当たっては、学生に対して、盗用だけはするな、引用するときには出典なり、出所を明記することを口酸っぱくして言うのが常であるからだと聞いている。にもかかわらず、分からないと思っているのか、苦し紛れに盗用して不合格になり、卒業ができなくなって、内定していた就職もご破算になるという事例が幾つもあることを聞いている。
博士号の取得は、今日では研究者として独立できる一つの証であるという位置づけになっていて、かつての博士号とは内実が変質していて、博士号の取得者も増えている。むしろ博士課程を擁していて学位を出していない研究機関に対しては、厳しい評価が下されるほどである。
このようなことを考えると、外部からの指摘が為される前に、審査対象の論文の盗用一つ見破れなかったのであるから、東大はむしろ学位審査機関の杜撰さと怠慢をこそ明らかにして、謝罪すべきであったのではなかろうか。学位審査の権威失墜をいや増しにしているとも言えよう。大学院大学が大手を揮うようになって却って学位審査が安易になっているのだろうか。文部行政とも深い関わりがあるのだろうが。
こうしたことは、数少ない事例の一つなのであろうが、社会科学や文学系の学位は、少なくともアジアでは日本の学位に権威があると言われてきた。だから、権威を失わないために学位の取り消しを実名まであげて公表したのであろうが、逆の結果を招いているとしか思えない。
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